昨年10月のバーナーズ=リーのびっくり発言から約4カ月を経て、W3Cに新しいHTML作業部会が設置された。HTML4とXHTML1をベースに、新しい(X)HTML仕様を2010年を目標に策定していく。従来のHTML作業部会はXHTML2作業部会という扱いになる(HTMLとは違う狙いなので、名前を変えることも検討しているそうだ。そりゃ大いに結構)。
Charter(設立趣意書)によれば、この新作業部会は次のものを策定していく。
- HTML4を発展させた、ウェブの文書とアプリケーションのセマンティクスを表現する言語
- この言語をXMLによって記述(シリアル化)する拡張可能な形態
- 既存ブラウザの「クラシックHTML」パーサと互換性のある、XMLではない記述形態
- この言語のためのDOMインターフェイス
- フォームその他のUIで用いるための、プログレッシブバー、メニューなどの共通部品
- リンクづけられたメディアを扱うためのAPI
- 編集のためのAPIと、ユーザがWYSIWYGで編集できるような機能
新HTMLには、このほかに現在はWeb API作業部会で検討が進められているもの(XMLHttpRequestとかデータストレージAPIとか)も含めていくとしている。また、上のリストの最初3つを見るとわかるように、新HTMLはXMLを用いるかどうかという記述方法(構文)の前に共通のセマンティクスを定義しておき、それを用途に応じてXMLや非XMLでシリアル化するという形を取る。RDFがデータモデルやセマンティクスとXML構文を分離しているのと同様で、柔軟性は高くなるだろう。
作業部会は、HTML検証用のテスト群とツールを提供することも役割の柱に挙げている。検証ツールは単にDTDに基づいた融通の利かないもではなく、他のスキーマを利用したり、名前空間を使った語彙の混在にも対応できるようにするという。せっかくのXHTMLなのに、Validatorを通らなくなるから他の語彙を利用できないというつまらない状況が改善されるかも知れない。
その他の技術との関連では、フォームはXFormsそのものではないようだが、XForms Transitional(そんなのあったのか)と整合性が取れるようにするそうだ。また、例の「HTML5」というのを提唱しているWHATWGとの関係については、(特許方針の範囲内で)新作業部会への参加を呼びかけて収斂を図っていくということらしい。
HTML4からほぼ10年が経過しているわけだから、その後の進展を踏まえて仕様を整備し直すというのはあってもいいだろう。いろんな反省を踏まえて、XMLでない「クラシックHTML」形態も用意する現実的な路線をとっているが、Dan Connollyを議長に据えていることからも、XHTML/GRDDLという方向性を捨てているわけでもないと見られる。願わくば、こちらのほうは「名称変更も含めた検討」なんぞをする必要がない、安心して使えるHTML仕様となって欲しいものだ。
〔追記〕プレスリリースの書き方がまずいというか、わざわざXHTMLを否定するかのような説明をしているので、リリースの切り貼り記事では《新HTMLはXHTMLではない》とも読めてしまう結果となり、混乱する読者も出ているようだ。背景説明やコメントも結構だが、大事なことを最初にきちんと押さえておくのは、記事でもプレスリリースでも基本中の基本。
- HTML4の10周年 (2007-12-18)
- HTMLの再構築? (2006-10-28)